VOD『ボーダーライン』

原題の"Sicario"は、スペイン語で“暗殺者”、“殺し屋”という意味だそう。主演はエミリーブラントだけど、彼女がそうなのではない。つまり物語の主人公は彼女ではないってこと。本作のエミリーブラントは、観客と一緒に、誰も説明してくれない過酷な状況に右往左往する係なのでした。。

やっぱり現実が一番恐ろしいってやつですよ。そんじょそこらのホラーよりずっと怖い。ずっと地獄絵図じゃないですか。なんなのメキシコ。某トランプさんが壁を作ろうって言ってたのがちょっと分かる気がしちゃうレベルですよ。

警官すら麻薬流通に加担してるなんて当たり前という社会で、正義がどうこう言ってる場合じゃないよね。でも世界中で少なくない公僕が麻薬に限らず色んな悪事を働いているのは分かってるワケで、ていうことは最初から正義を振りかざす方がおかしいって話になっちゃうのか?あれ?どうやって秩序って守られてるの?守られてるような気がしてるだけ?

ケイトと一緒に自分の正義や善悪の基準(ボーダーライン)があやふやになっちゃいそうな感じ。ヤバいね。

色んな状況と景色を淡々と俯瞰で眺めまくる演出はドゥニヴィルヌーヴらしいやつ、らしいです。序盤は本当に説明がないけど徐々にわかってくる展開。絶望に満ちた世界と、切ない家族の物語の前に、呆然と立ち尽くすしかない。なんでそんなことになってんのか、なぜ主人公(≒私たち)はこの状況を見せられているのか、なぜ何もできないのか、当然湧き上がる疑問や葛藤も、どこにも捌け口がない。抗おうとしても傷つくだけ。嫌ってほど現実なんだなぁ。
  • 2015年アメリカ
  • 原題Sicario
  • 監督ドゥニ・ヴィルヌーヴ
  • 脚本テイラー・シェリダン
  • 原作
  • 出演エミリー・ブラント、ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン、ヴィクター・ガーバー、ジョン・バーンサル、ダニエル・カルーヤ、ジェフリー・ドノヴァン、ラオール・トゥルヒージョ、フリオ・セサール・セディージョ、マキシミリアーノ・ヘルナンデス、ケヴィン・ウィギンズ、エドガー・アレオラ、ベルナルド・サラシーノ、ハンク・ロジャーソン、ディラン・ケニン
  • 声の出演
  • 制限R15+

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