劇場『ダンケルク』

何度も申し上げておりますとおり、わたくし歴史には弱いんでありますが、ひとカケラも記憶にないっつーのはそもそも日本ではあんまり知られていないエピソードなのか・・・な・・・?

イギリスでは「ダンケルク・スピリット」と呼ばれ大事にされている精神を生むこととなった史実なのだそうで、英国人ノーランさんとしては実際の戦争を題材とした作品は初、とのこと。

ネタバレというものは無いと言っていいんじゃないでしょうか、実際にあったと思われるできごとを登場人物の視点から淡々と描いているだけですから。1940年だから当事者の生存者はほぼ居ないでしょうけど、描写はとてもリアル。リアルだけど、感傷的にはならない。母国を想う気持ちだけは根底に流れているけど、見えているものは戦争そのものの中でも断片的な風景のみ。戦闘機で空から見下ろす兵士にとっても視界はとても狭いものでしかなかった。

この映画はつまらないと言う人もいるようです。映画に(限ったことではないけど)何を求めるかは人それぞれですから、得るものがなければ残念でしたで終了ですよね。私の場合つまらなそうと思えば観ないだけですし、観るか観ないかは自分で決めるわけですし(笑)

でもやっぱり、せっかく観るならつまらないで終わるのはつまらないので(笑) この映画に関しては「臨場感」を味わっていただくのが一番だと思います。私のよーに歴史に疎くても、銃で撃たれてしまうかも、撃墜されてしまうかも、魚雷に当たってしまうかも、海で溺れてしまうかも、などなどの危機を登場人物と共に切り抜けてゆく(または退場しちゃう)、というスリルならかなり楽しめます。実に手に汗もんです。ぜひ音響の良い劇場でご鑑賞ください。

これという主人公は居ない。これというヒーローも居ない。カタルシス(最近覚えた)もない。状況説明もろくすっぽない。そもそもセリフが少ない。それでも緊迫した表情と、それが緩む瞬間から心情を読み取って暖かい紅茶の香りを想像することは、国が違う生まれの人でも難しくないはずです。思い返して考えるほどに丁寧に作り込まれているなぁと感じるし、そう感じさせてくれることをありがたいと思うし、そういう意味でとても味わい深い作品と思います。
  • 2017年イギリス/アメリカ/フランス
  • 原題
  • 監督クリストファー・ノーラン
  • 脚本
  • 原作
  • 出演フィオン・ホワイトヘッド、トム・グリン=カーニー、ジャック・ロウデン、ハリー・スタイルズ、アナイリン・バーナード、ジェームズ・ダーシー、バリー・コーガン、ケネス・ブラナー、キリアン・マーフィ、マーク・ライランス、トム・ハーディ、マイケル・フォックス、ジョン・ノーラン
  • 声の出演マイケル・ケイン
  • 制限

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